何故!
心に思い浮かぶのは、激しい憤りのみ。
何故…?…何故!
こんなにも、俺はあんたに尽くしてきたのに。あんたの為に、あんたが、あんたが望む全ての者が、ニルヴァーナに行けるよう、俺は最善をつくしてきたのに。
なのに何故!何故、今更、一度も見たことも無い様な弱小連中とつるもうとする!?
「俺が、もっと強くなれば…!」
そうだ。
俺は、あんたの意見に従って、誰も喰らわないで今まで来た。あんたの想いに追従できるよう、誰も喰らわないで生きてきた。
俺だけじゃない、他の奴らも。
それに引き換え、奴らは……!
アンタだって見ただろう?
俺らの仲間を引き裂いて。喰らって。
あんた言ってたよな、悪魔は、俺たちは、敵を喰らうほどに強くなるって。
俺は、あんたと同じように、誰も喰らってない。あんたが望んだように、誰も、喰らってやいない。
だから、なんのためらいも見せずに喰らってる奴らに負けるのは当たり前だろう?
なのに…なのになんで、なんで俺を無視するんだ!?
俺がもっと誰かを食えば、敵を喰らえば、きっとあいつらに負けない強さを身に付けることが出来る。
そうしたら、誰の力も借りずに、俺の力で、俺の力だけであんたをニルヴァーナへと連れて行くことが出来る。
だから、なぁ。
他のトライブなんて、所詮は敵。いつかは戦う運命じゃないか。だけど、俺はあんたの右腕だ。右腕っていうのは体の一部だ。俺はあんたの一部なんだ。
だから、俺は、あんたを裏切りはしない。あんたと敵対する事は無い。
なぁ、ジナーナ!
「エンブリオンは信用できない…あいつらは、所詮敵だ!俺がもっと強くなれば、俺が敵を喰らえば、ジナーナをニルヴァーナへ連れて行くことが出来る!
だから、あいつらと同盟を組むなんて事は…!!」
「しつこいぞ、バット。ジナーナは、エンブリオンとの同盟を決めた。その意思は、変わる事は無い」
俺の力で、俺の力だけでジナーナを…。
「エンブリオンと合流し、ソリッドのシタデルへ行く。どけ、バット」
「ジナーナ!!」
俺はジナーナを必要としていた。
メリーベルを、そこに所属する全てのモノを必要としていた。
けれど、ジナーナは?メリーベルは?
あいつらは、俺が一度負けただけで、自分より格下のモノを見るかの様に俺を見た。
ジナーナだって、俺が一回負けただけで、エンブリオンがほんの少し見せた「甘さ」だけで、俺よりあいつらを必要とした。
俺は…俺は、本当に必要なのか?
違う。
俺は、メリーベルには必要とされていない。
あそこに必要なのは、ジナーナと、彼女の考えにそぐうモノだけだ。
俺にはジナーナが必要なのに。
ジナーナをニルヴァーナへと導くのは、ニルヴァーナへ赴く一歩を作り出すのは、俺でなくてはいけないのに………。
…何故俺を必要としない。
何故俺の腕を必要としない。
俺を否定するのか?俺を、今までずっとあんたと一緒に居たこの俺を、あの新参者より格下だと、そう思うのか?
それなら良い。
俺だって、お前らを必要となんかしない。
誰も 必要となんかしない。
全てを騙し。
全てを誑かし。
誰にも本心を明かさず味方のフリをして。
『蝙蝠は仲間外れとなり、誰も居ない夜にしか生きる事が出来ませんでした』
ああいいさ。
たとえ永久に一人になっても、誰にも認められなくても、それでも良い。
誰にも必要とされていないなら、自分の価値を認めさせるまで。
たった一人で良い。
俺一人で良い。
全てを制し、誰一人残さず、俺一人で頂上まで行ってやる。
誰にも、その先を見せてやるものか。そう、最後に笑うのはこの俺だ!!
ジナーナが見る事の無かった先を、他の奴らに見せてなるものか……!!
お願い、ジナーナ。俺を見て。
俺が居るじゃないか。……俺が、居るじゃないか。
ニルヴァーナに行くんだろう?俺が行かせてやるよ。俺が、皆を行かせてやる。
だから、俺を見て…あいつらなんかを信頼しないで、あいつらなんかに頼らないで、俺を信じろよ、俺を頼ってくれよ…なぁ、ジナーナ…
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