悪魔という人間 | |
やられっぱなしは癪に障るが、そんな感情をくだらないと思えるほど、彼への興味は大きかった。彼の隣にいる悪魔――彼曰く、仲魔というらしいが――達も彼に良く懐き、随っているから、恐らくなんらかのカリスマもあるのだろう。それを見極めるのも悪く無い。それに、先の雇い主が腹に一物持っている様な奴なのが気に食わない。 戦うべき少年につき、あの爺に一泡吹かせるのも面白い。 そう思い、彼を新たな雇い主と決めたは良いが……なんだか不安になってきた。 ダンテは、リョウの斜め後ろに立ち、毎度繰り返されるやり取りを聞いていた。 アマラ神殿の前。 天使に何か恨みでもあるんじゃないかと思えるほど、天使をぼこぼこにしていたリョウが、命乞いの言葉に動きを止める様は、何時見ても不思議だ。戸惑った様に振り返り、意見を求めるようダンテを見る。 見られた方は、我関せずとでも言うように(実際関係ないのだ。命乞いされているのはダンテじゃない)相棒を弄び、無視している。 仲魔になるから助けてくれ。 毎度の如く聞いている台詞だ。いや、毎度ではない。幾つかバリエーションがあることに気づいたのはつい最近だ。 マッカをやるから、アイテムをやるから。 その度に、リョウは、笑顔で良いよと頷いて―― 「 」 くしゃりと、顔が泣きそうに歪んだ。 あぁ、とダンテは苦笑した。 甘いのもここまで来ると尊敬に値する。 襲い掛かってくる悪魔をひらりとかわすと、リベリオンで真っ二つに切り伏せた。 「何時まで泣いているつもりだ?少年」 声をかけると、睨むような視線と泣いてない、という答えが返ってきた。 そんなことを言われても、目が赤ければ説得力の欠片も無い。 「全く…そんなんで良く生き残って来れたな」 「………かったな……」 「ん?聞こえないぜ?」 「悪かったなっていってんだよこの老眼っ!!」 「………少年…老眼は、目だぞ?」 指摘すると、分かってる、と小さな声が返ってきた。 やり取りを聞いていた東洋系の黒髪の悪魔が、これでもかと言うほどに睨みつけてくる。あぁ、こいつも大変だ。こんな『お子様』のお守をしなきゃいけないなんて。 思わず嘲笑がこぼれる。その表情でダンテの心を悟ったのか、刀に手を伸ばした黒髪の悪魔をリョウはダンテに聞き取れない言葉で制した。 畏まりました主様。 そう言って、黒髪の悪魔は刀を納めた。 己に害するモノすら傷つけられない少年だ。それが、仲間であれば尚更のこと。 やっぱり、彼に組みしたのは間違いか。 次に浮かべた笑みは、自嘲のものだった。
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知っている
仲魔の哀しい表情を
誰も哀しんで欲しくない
誰にも死んで欲しくない
大切なんだ
仲魔が、悪魔が