一時限目の国語にて。

そういえば、珍しく皆守がHRから居たなぁ、と思い出し、葉佩は何気なく後を振り返ってみた。よくよく考えてみると、皆守が授業を受けている姿という物を見たことが無いような気がしたのだ。
しかし、葉佩のそのささやかな願いは簡単に打ち破られた。

皆守、机に突っ伏して爆睡中。

「……裏切られた……」
別に裏切ったわけでもないのだが。
「どうしたの?九チャン」
呆然と呟く葉佩に、隣の八千穂が不思議そうに声をかけてきた。心なしか疲れ気味の顔を八千穂に見せた葉佩が、親指で後の方、即ち皆守の席を指差す。
不思議そうに視線を向けた八千穂だったが、その先の光景を見ると小さく吹き出した。(顔はわからなかったが)のんきそうに眠る皆守と、あからさまに落胆している葉佩の対比が面白かったのだろう。
どんよりとしたままの葉佩がため息をつく。
笑いながらごめん、と声をかけようとした時、空から声が降ってきた。
「葉佩君、八千穂さん?」
「……え?」
「仲が良いのはいいけれど、今が授業中だってこと、忘れてないかしら」
「あ」
怒った様な、しかしどこか困ったような表情で、雛川が二人を見下ろしていた。


授業態度悪し。マイナス二点。
 




本日はどこのクラスも歴史をやる予定はありません。
 



本日は、化学の実験

化学室の片隅で、何かが爆発した。
九月下旬の爆弾騒ぎを覚悟した教師が見たものは、ものすごくパニくっているエジプト人留学生と、眉尻を下げて困ったようにうろうろしているバスケ部員だった。
「……取手、一体、何が……」
別に、彼はトトをのけ者にしたわけではない。教師は瞬時に悟ったのだ。
トトからは、話が聞けないと。
話を振られた取手は、相変わらず困った顔で教師を見、先ほどまで共に実験をしていたトトを見た。
「その……僕にも良く、解らなくて……あ、二人とも、怪我は無いです」
「……それは良かったが……」
焦げている実験台の周りには、粉々に粉砕された試験管とビーカーの破片。
「念のため、保健室に行ってきなさい」
「……解りました……」
「……ついでに、トトも連れて行ってくれるとありがたいんだが……」
「あ……はい……」

未だ混乱している様子のトトを引っ張りつつ保健室へ向かう取手の後を見ながら、化学教師は深く、深くため息をついた。


〜本日の実験〜
取手、トト両名リタイア。
実験の安全性を見直す必要がありそうだ。
(化学教師の日記より)

余談。

「んー?すどりん、何で生物苦手?」
「やぁねっもう!そんな恥ずかしい事聞かないでちょーだいっ!!」
ばしっ
「ぐはっ……」

 



体育は、少し遅いが体力測定。

「七瀬さん、大丈夫ですのぉ?」
「……え、えぇ……少し、息が切れただけですから……」
体育館の片隅で、七瀬がへばっていた。
その隣では、同じクラスのリカがどこかしら心配そうに七瀬を見ている。この二人、先ほどまで同じようにシャトルランをしていたはずなのだが……

「り、リカさん……」
「なんですのぉ?」
「だ、大丈夫なんですか?」
「何がですかぁ?」
「いえ……その、疲れは……」
「あぁ、それでしたらもう取れましたわぁ」
「……そう、ですか……」

まぁ、終了から数分立っているから、それもありといえばありなのかもしれない。実際、周りの同級生を見ても、自分みたいにへばっている人は見当たらない。
……が……
七瀬としては、どう見ても自分より体力のなさそうなリカがへばっていないのがふに落ちなかった。


「個人曰く……人は、見かけによらない……」
「……?何かいいましたぁ?」
 



数学は自習

「ったく……こんなのもわかんないのかよお前は」
「う、うん……ごめんね、夷澤くん……」
「謝ってる暇があるならさっさと解け」
「あ……ごめん……」
小さくなって謝る響に、夷澤はまた謝ったとは指摘せず、だた舌打ちを漏らした。

響がごめんと漏らしたのには、別に大した理由は無く、別に夷澤になにやら言われたからでもない。いや、理由はあるといえばあるのだが、言葉に出すと夷澤に本気で殴られかねない物なのでとりあえず無いということにしておいた。
ちら、と苛立たしげに問題の説明をする姿を盗むように見る。

あぁ、やっぱりかっこいいなぁ。

大した理由も何も無い。
解らないから教えて、と言って、自習プリントを持っていった事。謝る理由はそこにあった。
問題がわからなかったわけではないのだ。ただ、教えてもらいたかっただけで。

「で、ここが……おい、聞いてんのか?響」
「えっ?あ、うん。聞いてるよ、ちゃんと」


結局プリントはあんまり進みませんでした。
先生、ごめんなさい。
 



本日最後は音楽。

「甲。間違いすぎ」
「煩いっ。俺だって真面目にやってるんだ。お前に文句を言われる筋合いは無い」
「いいや、言わせて貰う。これは合同演奏だ。授業だ。たった一人の不調和で、俺はともかく八千穂と白岐の評価まで下がるんだ。間違えるなとは言わんが、間違える場所は選べ」
「選べるかっ!」
「九チャン、皆守クン!」
「「八千穂は黙ってろ!」」
「で、でも……」
「哀しくとも、これは試練だ」
妙にかっこつけて葉佩が言い切る。
「ふん。後で泣いても知らないぜ?」
それに対抗意識を突かれたか、皆守も余裕のある笑みで見下すような表情を浮かべる。
一触即発の雰囲気が流れ出す。その瞬間
「……二人とも……」
妙に力のあるオーラが流れてきた。
ぎょっとした二人がそちらに視線をやると、髪を逆立てんばかりの怒りを秘めた白岐が、カスタネット片手に睨みつけていた。
「八千穂さんを、困らせないで……」
「「ゴメンナサイ」」
葉佩も皆守も、即座に頭を下げる事しか出来なかった。

「……それよりさぁ……今、発表中なんだけど……」

はっと我に返り教室を見渡すと、クラスメイト達が、呆然とした表情で自分達を見ていた。


最初こければ皆こける。
 



彼は、放課後から動きだす

チャイムが鳴り終わり、日が暮れたら活動開始。
依頼内容を読み、今ある物で何とかなる分とそう難しく無い物だけをざっと受ける。今ある物で何とかなる品を送りつくせば次の依頼。
なんともならない依頼で予定が埋まればパソコンの電源を消して外に出る。
まず行く先は阿門邸。最強爺の目をかいくぐり、調度品をちょろまかす。
次は仮面の男から頂いた鍵を使って校舎内へ。化学室の焦げている部分に首を傾げながら、実験道具をポケットに突っ込んでいく。
流石に職員室はやばいかなと思っては居るが、手はしっかりと物を盗む。哀しき宝探し屋の性だ、と己を納得させながら、他の教室も回っていく。
誰かの夜食のポテチや、誰かの昼飯になるはずだった焼きそばパンなど、半分以上は売られていく。

校舎も蹂躙し尽くした所で外に出る。温室で何故か栽培されている唐辛子や、改装中のバーに忍び込んで水や酒を懐に。彼らがひっそり飲む酒は、ここから盗まれた物である事が多い。葉佩は美味しいと言ってはいるが、アルコール度数が高いのが問題だ。
墓守小屋を覗き、粘土とニンニクを借り受ければ一次探索はこれにて終了。
妙な達成感に笑みを浮かべつつ、墓地へと足を向ける。

「遅いぞ、九ちゃん」
「約束の時間だけど?」
「……皆守クンが早く来すぎただけじゃない?」
「こういうのは、五分前行動なんだよ」
「もう。そういうのは、普段からやってる人がいうもんだよ?」

変わらず迎えてくれる友人に、ほんのり笑みを浮かべつつ。

「そうそう、今日の依頼だけどねぇ……」
「また変なモンばっかりだろ?」
「ステンレス包丁から始まり皮の鞭に終わります」
「……いっつも不思議に思ってたんだけどさぁ……それって、何に使うのかなぁ……」
「え〜?……弟を楽にする為と……外交を上手くやる為だって」
「…………え!?」
「平たく言ったらヤっちゃうのとえすえむだね」
「……お前、そんな依頼受けんなよ……」


明日も学校があるので、出来るだけ早めに切り上げます。
 


七つのお題より「学校」。
…社会はー…普通にネタが上がらないという非常事態でー
……えーっと、その……
…………そんな感じです。
お題提供サイトはこちら


戻る





















それではお休みなさいませ