They are there





彼らの手助けをし、また信用を得たいとも思ってはいるのだが、実際の所、彼らが人でない事に違和感を隠せない。そんな己の抱いている気持ちに気付いているのかどうかは知らないが、彼らの参謀や紅一点は複雑そうな表情を時折見せる。
どんな形でこの世に現れたにせよ、彼らは結局の所人ではなく、プログラムされたものなのだ。どんな過程を経て人らしい感情を獲たかは知らないが、彼らはあまりに人に近すぎて、しかし結局の所は人ではなく、だから更に違和感を募らせる。もしこれで、人とは全く違う考え方を持つ生き物であれば、こんなにも心を揺るがす事は無いだろうに。
一つ一つの行動があまりにも人らしすぎて、しかしA.I.だという事実を知っている身としては、彼らは複雑で、そして僅かに気持ちの悪いものの様にも思えるのだ。
確かに、彼らに手助けしようという気持ちはある。嘘ではない。仲間として認めてもらえれば幸いだとも思っている。
しかし、それとこれとは全く違う感情から来ている物だ。
笑う犬を可愛いと思いつつ、心のどこかで気持ち悪いと思う。そんな感情に似ている。
彼らのリーダーである水冠を持つ青年は、そんな複雑な思いを抱かれているという事などどこ吹く風で、ただ、仲間になったのなら守るよ、と薄らと微笑んで呟いた。そんな彼の姿は、最初に会った少年や参謀などとは全く違い、紛う事無きA.I.の様に見えた。
ほんの僅かなれど安堵する自分に、意味の無い苛立ちと嫌悪感を感じた事を覚えている。





俺は、彼らを恐れているのだろうか。
人のようで人ではない彼らを。
それとも……
人か人でないかでしか判断できない
そんな自分を、嫌っているのだろうか






それは、幾つかの戦闘を終え、幾分悪魔の体というものに慣れてきた時だった。
時折変身する間もなく襲われるという事もあり、愛用の銃の手入れをしている時に彼は音もなく近づいてきた。流石に戦闘用プログラムというだけあり、その仕草には全く無駄はなく、確かに鈍ったとは言え戦士であったという己の自信を完膚なきまでに叩き伏せるには十分の物だった。
事実、ロアルド?という呟きを耳にするまで彼の存在に全く気付かなかったぐらいだ。
飛び上がりたいほど驚いた心を隠し通し、何事だ、と視線を向ける。
すると、常に茫洋としている水冠の青年は、(意外な事にも)相変わらず茫洋とした表情ながら僅かに眉間に皺を寄せ
「大丈夫か?」
と聞いてきたのだ。だが、その表情は相変わらず不透明で底が知れず、本当に心配しているのか否か全く解らない。
何がだ、と問うと、あぁ、だのうん、だの歯切れの悪い言葉を呟きながら銃を持つ手を指差した。
「手が」
「……手?」
「銃の…手が、震えてたから」
ぽつぽつと話す青年の言葉に、改めて己の手を見つめる。それと同時、そういえば銃を構えた時に照準のぶれがあったなという事を思い出した。
悪魔化していた時には殆ど気付かなかったのだが……どうやら、心地よい陶酔の世界に浸かっていた身体は、まだその代償を払いきれていないらしい。
微かに震える手を握り締めると、未だ己から目を離そうとしない青年へ向け口を開いた。
「これは、武者震いというやつさ。だから、心配は要らない」
じゃぁ大丈夫だな、と言って微笑んだ青年の表情は、とてもプログラムされたものとは思えなかった。
初めて見た表情らしい表情に、激しく何かが崩れ落ちる音が頭の中に響いた。どうかした?と尋ねてくる青年に、今度はこちらが歯切れの悪い言葉を返す羽目になってしまった。




未だ脳はアルコールに犯され正常な判断はできないのだ。
だから、今は彼らが人か作品かを考えるのはやめようと思う。
完全に酔いが醒め、この手が震えなくなった時。
その時にでも考える事にしよう。

何時になるか、全く見当もつかないが。




プログラムって事は作られたものって事で。それなのに全く人間と同じ行動をするエンブリオンを僅かながら気味悪いなぁって思ってたらいいなぁ、と。
人間だもん。そのぐらい後ろめたい気持ち持ってても可笑しくないよな。と。
趣味で思ってみました。



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笑い 怒り 哀しむ
それは人の特権

では問おう

人の定義とはいかなるものかと
笑い 怒り 哀しめば
それは人ではないのかと