餓鬼「…………」
裸足「…………(熟睡中)」
きっかけはベット。
歯磨きを終えて戻ってきたコンのベットにカエデがひょこんと入っていた。
これだけ言うと、うっかり間違えて潜り込んだ様に聞こえるが、どちらかと言えばお前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの状態。
ぶっちゃけ、カエデがベットを二つとも占拠した、というわけだ。
その様子を見た(聞いた?)瞬間、可愛らしい怪獣パジャマを着たコンの額に青筋が浮かんだ。
餓鬼「ふぁっきゅー!!」
べしぃっと投げたのは怒りの弾丸。もとい怒りの枕。
だがしかし、普段使っている銃とは違い、重さも形状も攻撃方法も全く違うそれは、少年の思惑を見事に外れ、彼が二番目ぐらいに慕う男の頭へぶっ飛んだ。
暴君「………………」
餓鬼「……あ、ダン……(汗)」
むくりと起き上がった暴君は、何故か一糸纏わぬあられもない姿。
メンバー唯一の女性は寝ているが、そういう問題でもない。ていうか、寝ていようが起きていようが女性の居る部屋でマッパは拙いだろう、本当に。
しかし全く他人を気にすることの無いダン。それでこそ暴君。
自分の頭に吹っ飛んできた枕を掴み、怒りも露にゆらりと立ち上がった。無論マッパ。ちょっと精神衛生上微妙な光景だ。
暴君「てめぇ……!!」
餓鬼「うわっ、ダン、ごめんなさ……」
盗人「ぐはっ!!」
餓鬼「……え?」
ぶん、と振りかぶった枕が吹っ飛んだ先は、何故か犯人であるコンではなく、その隣の隣でうつらうつらしていたコヨーテの頭。
多分、否、絶対に狙ってる。
盗人「てめぇ……良い度胸してんじゃねぇか、あぁ!?何のつもりじゃこら!」
暴君「あぁ?なんだお前だったのか。てっきり虫かと思ったぜ」
盗人「はっ。モノがちいせぇと、頭まで悪くなるみてぇだな」
一触即発。
ぎりりとにらみ合う双方が、どちらとも無く枕を手にした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
眼鏡「……………………」
一体どこから取り出したんだといわんばかりの大量の枕が、二人の間を飛び交う。
緑黄色青黒ピンク、たまにどマイナーなヒーローが描かれた枕までもが吹っ飛んでいく。
餓鬼「……ハンサムマン……」
始めはしょんぼりと見ていたコンだったが、次第にヒートアップする枕投げ(そう、どれだけ白熱していてもそれは所詮枕投げなのだ)にうずうずしだした。
そしてやはりどこからか、可愛らしいアニメヒーローが描かれた枕を取り出し、コヨーテの背中めがけてぶん投げた。
盗人「!?」
餓鬼「当たったっ!!」
完全にダンとの試合(これは殺死合に非ず)に熱中していたコヨーテが、不意をつかれてよろめいた。
そして、振り返って一言。
盗人「何でお前まで投げるんじゃ!!」
餓鬼「え??だって……」
暴君「取った!!」
その瞬間、ダンがガルシアンの枕(因みに低反発枕)をむんずとつかみ、コヨーテの頭へと投げつけた。
慌てて振り向いた所に第二段。
がすっ、と角が額に当たり、為すすべなくコヨーテが吹っ飛んだ。
暴君「よし、コン。や(殺)っちまえ!」
その言葉に、普段遊んでと言っても『あぁ!?』(注:チンピラ風に)だの『今忙しいんだ』だの言われて滅多に構ってもらえないコンの悪戯心に火がついた。
餓鬼「えいっ!」
どすんっ!!
盗人「ごはっ!!」
で、吹っ飛ぶ首。
餓鬼「……あ、あれ?(汗)」
暴君「(良く殺った、コン)」
三番目ぐらいに慕う男が紙袋と化し、コンは本気で戸惑ったようにあたりを見回した。
遠くの方でひっそりダンがガッツポーズを取ったのは、この際気付かなかった事にした。
業者「…………お前達……寝るときぐらいは静かにしろ……」
戸締り点検をした後に、(何故か)ハーマンの車椅子を押してやってきたガルシアンは、中の惨状に頭を抱えた。あたりに散らかる枕の山。気がついたらケヴィンはおらず、騒ぎの元凶ともいえるカエデは相変わらず熟睡中。
そして、何故か転がる紙袋。
ちっ、と舌打ちをしつつ暴君は布団に潜り、コンはベットを取られたままだった為、騒ぎを終始微妙な顔で静観してた、一番目に慕う男の布団へもぐりこむ事にした。
餓鬼「マスクマスク、今日一緒に寝て良い?ベット、カエデに取られて寝る場所無いんだ」
覆面「僕の所で良いなら、好きに使うと良い。……だが、明日になったらちゃんとコヨーテに謝るんだ。いいね?」
餓鬼「うん!……じゃぁ、おやすみなさい」
覆面「あぁ、おやすみ」
で、余談。
休む間も無く紙袋を回収し、今蘇生させたら確実にダンと血で血を洗う喧嘩になるため、可哀想だと思いながらも結局コヨーテを蘇生させぬまま戻ってきたガルシアンが、枕片手にハーマンを狙うダンにうっかりキレ、その後頭部に枕をぶん投げたのは別の話。
そして翌日。
ケヴィンは部屋の片隅にて、愛用の巨大テディの下に埋もれている姿を発見された。
Good Night Child
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